ドイツのDOEMENS醸造学校と協力し、ジャパンビアソムリエ協会が日本語での講座を開催している、国際資格ディプロムビアソムリエの講座。2018年に開催した第1期では、9人の有資格者を世に送り出しました。そして今期、17人の受講生が資格取得を目指し、ともに学んでいます。殆どの講習がオンラインで行われていますが、会場に集まりリアルで行われるプログラムも一部あります。テイスティング、醸造実習、フードペアリング、オフフレーバーやサービスのトレーニングなどがそれです。
なかでも醸造実習は、専用の醸造機器を扱ってビールづくりを実践的・体験的に学べる貴重な機会です。研修が行われたのは、東京エールワークス醸造所。受講生が、この日だけの醸造チームを結成。役割分担は、ヘッドブルワー、ブルワー、マーケティング担当、清掃担当など。ビールづくりの経験のある人もない人も、共同作業による連帯感が生まれます。
東京エールワークスのブルワー、ランディ・カーンクロス氏の指示に従い、受講生らはヘイジーIPA班とブラックIPA班に分かれ、それぞれのビールをつくりました。今回は、日本のクラフトビール好きに人気のヘイジーIPAの作業風景を写真で追ってみました。
ランディ先生のレシピに沿って作業を進めて行きます。まずはモルトを計量し、ミルに入れて粉砕します。ヘイジーIPAのミルキーでスムーズな口当たりを生み出す鍵となるのが、このオーツ麦。これは粉砕せず直接マッシュに加えます。
塩化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸など、マッシュのpH を調整する醸造用水への無機塩添加物。これらを計量する際には、手袋やゴーグルなどを使い、安全性に細心の注意を払って作業します。
ホップの計量。乾いたペレットの状態でも、ビーカーごとに香りを嗅ぐと、品種によって違いが感じられます。
ビールのもとになる麦汁をつくる麦芽の糖化、マッシング。麦芽をお湯につけて酵素が働きやすい温度に加熱し、約2分ごとに温度チェック、何度もスイッチのオン・オフを繰り返します。マッシングパドルでお粥をかき混ぜるような要領で。目標とする数値になるまで約1時間。根気の要る作業です。パドルは様々な形状のものがありますが、こんなホップのモチーフのすてきなアイテムを使いました。
スパージング。糖化した麦汁をケトルに移した後に、マッシュタンの中に残った粕にも、まだたっぷり糖分が残っています。上からシャワーのようにお湯を掛けて穀粒に付いている糖分を洗い流し、無駄なく麦汁を取ります。
ワールブール。糖化された麦汁をケトルで煮沸し終わったら、パドルでぐるぐると渦を巻くように攪拌します。すると、遠心力によりホップ粕などの不要物がタンクの中心に集まり、底に沈みます。
麦汁を抜き出した後に底に溜まった残滓を掻き出します。煮沸釜、ホース類他、使用した機器や器具の洗浄、後片付けは、ブルワリーを清潔に保つための極めて重要な作業です。
麦汁は熱交換器で急速冷却されて発酵タンクへ。酵母を投入したら、後は発酵が始まるのを待ちます。ランディ先生いわく、「ブルワーが麦汁をつくり、酵母がビールをつくる。ブルワーたちの仕事は、何か発生したら、手を貸すのみ」。来月には美味しいビールになっていますように。
このビールが飲める頃にはみな、ディプロムビアソムリエの資格を取得していることでしょう。ディプロムビアソムリエの手になるヘイジーIPAとブラックIPAが、どこでどのような形で飲めるようになるかは、後日、お知らせします。