Biersommelier-Stammtischの会場としてお馴染みのシュマッツレストランで年間23万杯飲まれているという『ヘレス』が缶になりました。缶製品は、昨年3月に発売の「ヴァイツェン缶」に続く第2弾です。ヘレスは、認定講座を受講して資格を取得したビアソムリエの皆さんなら、よくご存じの南ドイツの伝統的なビアスタイルですね。でも、商品名になっているビールは日本市場にさほど多くなく、一般消費者にとっては意外と“新しい”かもしれません。

マーク・リュッテン氏
共同創業者および代表取締役のマーク・リュッテン氏は、北ドイツの都市ハンブルク育ち。ビール王国バイエルン出身のお母さんの実家に遊びに行くことで、南ドイツの文化にも触れていたそうです。そんなリュッテン氏が日本にやって来た時に違和感を覚えたのが「生ビールください」という注文のしかたでした。それは、どんなビールが運ばれてくるのか全く興味がないということ。20〜30年後には日本人も自身の好みのビアスタイルを知り、「ピルスナーください」「ヴァイツェンください」「ヘレスください」と注文する楽しみ方を定着させたい。それが彼のビジョンです。
ヘレスはラガーのひとつです。日本市場で87%を占めている従来のラガーはピルスナー。爽快な苦みがビール愛飲家の支持を得ていますが、一方でビールを好きではない人のハードルとなっているのも、この苦味。クラフトビールブームに乗ってIPAを飲んでみたらやっぱり苦かった、なんていうことも少なくない。この問題に対応したのが、大手のすっきり飲みやすい苦くないビールですが、ヘレスはこれに加え、ビールらしい旨みとプレミアム感も兼ね備えています。
「苦くない、でもしっかり旨い」。バイエルンで160年の歴史を誇る家族経営ブルワリーが半径100㎞以内で収穫した原料を使用、伝統的製法でじっくり熟成させてつくる本格ビール。「週末シュマッツ」を謳い、ちょっとした特別感、贅沢感を味わって欲しいという想いを形にしたのが、この『ヘレス缶』なのです。

片桐大介氏
ヘレスの魅力を料理とのペアリングと共に紹介するのが、ドゥーメンスビアソムリエの資格を持つ社員、片桐大介氏です。ドゥーメンスビアソムリエは、1901年に創設し世界中にブルワーを輩出するDOEMENS醸造学校が認定するディプロムビアソムリエという国際資格です。日本ではジャパンビアソムリエ協会が同校と協力し、ドゥーメンスビアソムリエ認定講座を日本語で開催しています。国内では現在のところ2期生までを世に送り出し、約25人の資格保持者がいます。
片桐氏が提案するヘレス体験は、五感で楽しむこと。色と泡立ちを見て、香りを嗅ぎ、口に入れて味わい、のど越しを楽しむ。そして、音も。グラスを高く掲げて仰ぎ見ると、淡い黄金色の輝きと、きめ細やかな泡立ちが確認できます。鼻を近づけると、軽くトーストしたパン、フローラルな甘い香りも感じられます。ピルスナーは喉越しを楽しむのに対して、ヘレスは香りを楽しむビールでもあります。炭酸が穏やかで、舌の上になめらかなモルトの甘みが残ります。のど越しは柔らかくスッと入って行くスムーズな飲み心地。そして、プルタブを引いた時のプシュッ!という音は、缶だからこそ。
そもそもブランド名のシュマッツ(Schmatz)とは、幸せの音を表すドイツ語です。好きな人にチュッとキスする音。美味しいものを食べた時の舌つづみの音。自分へのご褒美に缶ビールをプシュッと開ける音は、まさにそれです。その幸せな音を更に共鳴させるのが、相性のよい食べ物との組み合わせです。ドゥーメンスビアソムリエの腕の見せどころとも言うべき『ヘレス缶』とのフードペアリングを紹介しましょう。
ニュルンベルガーソーセージ
塩味がヘレスの甘みをひきたてるのは、スイカに塩みたいな効果。肉の脂を心地よく流してくれます。
アンチョビバターのフライドポテト
アンチョビのちょっとクセのあるフレーバーを、ヘレスが柔らかく包み込んで調和します。
オバツダ
バイエルンの伝統的なチーズディップ。クリーミーなチーズとヘレスの優しい口当たりとのバランス。 合わないわけがない郷土の味の組み合わせ。
チーズとハチミツのドイツ風ピザ
チーズの塩味とハチミツの甘みに、薄焼き生地のパリパリした食感。まろやかなヘレスとの相性は、無限ループです。
メイプルナッツ
クルミにメープルシロップのウッディな甘みが絡み、ヘレスのモルティな甘みとの相乗効果が生まれます。家飲み用に常備しておきたいアイテムです。

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抹茶アイス
抹茶の苦味をヘレスの甘みが抑え、それでいて抹茶フレーバーは強調されます。アイスクリームにビールという組み合わせの妙。抹茶の味が濃厚なアイスを選ぶと良いでしょう。
全国発売は、3月18日から。モルトの甘みとホップの苦みとのバランスが絶妙で、ペアリングの幅広さが魅力のヘレスは、日本のビールのトレンドに一石を投じられるのか? ビアソムリエにとっては楽しみながら取り組み甲斐のあるイシューですね。